契り 今はただ、雪原のようなこの道を往く。 真白の闇を、足音のカラカラという音で引き裂いていく、その先へ。 薄明るい空、あの日もこの道を往ったと、秘めやかに哂う。 酷く、疲れたような感覚が、肩に、脚に、首に、腰に、絡みつく。 往ってはならぬ、戻って来いと誰かの声が聞こえた気がする。 戻るものか。 帰るものか。 この先には求めた何かがあるとわかっているのに。 導かれている。 呼ばれている。 この先の見知らぬ、懐かしい何か。 この狂おしいほどの胸の切なさが、今の原動力の総て。 カラカラと、白の河原を往く。 石は軽く、少し蹴り上げるとふうわりと浮くように感じる。 まるで、骨のように。 その粉塵が舞う白の河原を往く。 塵を吸ってしまわぬように、慰めに口を手で覆う。 その手を、ついと引かれた気がした。 交わした契りを、護る為に。 脚はそのまま、河を渡る。 ああ、君だ。 君の為だった。 そうだ、契りを交わしたのは。 交わした契りを、果たす為に。 脚はそのまま、河を渡る。 もう二度と離れないように、と。 |