風を切る

9.羽根



空を飛ぶ。
それが赦された一つの自由。

幸福かどうか、は解らない。
触れる大気を片っ端から切り裂いていく、それだけが、すべて。

はらはらと墜ちていく羽根の白さが、痛くて。
「私」だったモノの、それが末路だと知って。

「私」の存在が粒子だとして。
この身があの羽根のように、少しずつ、
けれども確実に崩れ落ちるものだとしたら。


「私」の存在があったことを証明するのは、どの部分?



今はただ、墜ちてゆく最後の風切羽を見送って。
最後に墜ちる「私」を待ってる。



2006.4.30


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