月明かり 10.夜 僅かな質量を持って、闇が降りてくる。 熱を届けた陽射しは、色を少しずつ失いながら、融けてゆく。 肩にかかる微かな重みに、唇を引き締めて。 恐怖と安堵に少し、目を閉じる。 伸ばした指さえも見えない一瞬の暗闇。 ふと見上げると、穴が開いたように白い満月。 どこまでも降り注ぐ柔らかな光から逃げるように。 僕は自分の影を追う。 2006.4.30 back